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ISAT Q&A

ISAT とは?
ISAT とは、破裂脳動脈瘤治療における血管内治療(コイル塞栓術)と開頭手術(クリッピング術)の安全性と有効性を比較した唯一の多施設共同の治療時無作為ふりわけ臨床試験です1。 ISAT の主な目的は、開頭手術と比較して血管内治療により要介護または死亡率( Modified Rankin Scale 3 から 6 )が減少するかを調べることです。

ISAT での患者さんのタイプは?
ISAT での主な適応基準は、破裂脳動脈瘤でクリッピング術とコイル塞栓術の両方の治療が可能な患者さんです。しかし、多くの患者さんが両治療法に適応しているわけではありませんので、臨床試験で無作為化された 2,143 例のほとんどは、良好なグレード( 88 %: WFNS のグレード I と II)で、サイズの小さな前方循環系動脈瘤( 92 %が 11 mm以下)でした。

ISATの主な結果は?
結果は、両方の治療法に適応した患者さんについて、コイル塞栓術が開頭手術と比較して術後1年の無障害生存率が高い結果が出ています。血管内治療を受けた患者さんの1年後の死亡または重篤な機能障害の相対リスクは、開頭手術の患者さんと比べて、22.6 %低く、絶対リスク減少率は 6.9 %でした2。追加治療と早期再出血発生率の可能性と影響を確認するために1年後の主要評価項目が選ばれました。
破裂動脈瘤の患者さんの治療はどうしたらよいのでしょうか?
ISAT の結果は、臨床試験で無作為化された患者さんのタイプ(サイズが小さい前方循環系動脈瘤のグレードが良好な例)に依存します。こういった患者さんはコイル塞栓術に適していて、治療のプロトコールの一環として血管内治療(コイル塞栓術)の可能性を検討するべきといえます。しかし、このタイプでない患者さんの場合は、他の研究に基づいて治療の決定をするのが望ましいでしょう。

術後1年の両治療法における再出血率は?
術後1年の再出血率は両群とも低いものでした(血管内治療群では 2.4 %、開頭手術群では 1.0 %)。血管内治療患者群の術後 1 年の死亡や重篤な機能障害相対リスクは開頭手術患者群よりも 22.6 %低く、再出血の結果はこれに含まれます。

両治療法の長期経過後の再出血率は?
ISAT の長期間を対象とした完全なデータはまだありませんが、既に 1997 年から患者さんの登録が行われているため、かなりのフォローアップデータが集まっています。両患者群においては術後 1 年の再出血率に統計的違いは認められませんでした。1年後の再出血率については、血管内治療患者群では 1,276 例中 2 例、開頭手術患者群では 1,081 例中 0 例でした。少なくとも 2007 年まで患者さんのフォローアップが続けられます。

ISAT 施設と米国の病院をどのように比べればよいのでしょうか?
ISAT 参加施設では年間 60~200 例の破裂脳動脈瘤が治療されています。また、米国内の年間症例数が多い施設では、破裂脳動脈瘤治療に関する開頭手術において同様の死亡率が報告されています3。しかし、米国内の多くの破裂脳動脈瘤の患者さんは年間症例数が多い施設で治療を受けておらず、破裂脳動脈瘤の症例数が 18 例未満の病院で治療を受けているのです4。実際、米国の破裂脳動脈瘤の患者さんの 75 %が年間症例数 36 例以下の病院で治療を受けています。ISAT 参加施設では外科医と血管内治療医の専門家の両方を揃えていますが、米国内で破裂脳動脈瘤によって入院した患者さんの 75 %以上は、血管内治療を受けていないことが分かっています。

ISAT での死亡率はどのように他の試験と比べればよいのでしょうか?
ISAT で報告されている開頭手術の死亡率は、北米における多施設無作為の Tirilazad 臨床試験での報告と類似しています。2 つの臨床試験において臨床グレードの分布と結果評価の時期に違いがありますが、Tirilazad 臨床試験は、開頭手術結果のある程度の指標を出しています。また、Tirilazad 臨床試験では、グレード I から III の患者さんのうち 9.2 %が 3ヵ月以内に死亡しました3。ISATでは、外科治療では術後 2 ヵ月で8.3 %、1 年では 10.1 %が死亡しました。脳動脈瘤の外科治療に関する他の利用可能な試験は、直接ISAT と比較することは出来ない症例です。無作為化臨床試験では、治療前に治療法を変更した患者さんと再出血した患者さんを加えたすべての登録例の死亡率を記録していますが、自己報告の症例は多くの場合、こういったケースや思わしくない結果を含みません。

ISAT の合併症の発生率は他の試験とどのように比べればよいのでしょうか?
他の試験の合併症データ比較は、データ収集の方法に差があるため信頼性がありません。ISAT では、Modified Rankin Scale に基づいた患者さんによる結果報告です。脳動脈瘤の開頭手術に関する他の試験は、医師または Glasgow Outcome Scale を用いた第 3 者評価によって報告されています。

ISAT に新たなデータは追加されますか?
英国臨床研究会議は 2007 年まで ISAT に助成金を拠出することを了承しています。費用対効果、生活の質(QOL)、血管造影の所見、そして再出血率についての追加データが集められ、分析し出版される予定です。

ISAT についてもっと詳しい情報を得るためにはどうすればいいですか?
臨床試験の計画と結果については ISAT のホームページ(http://users.ox.ac.uk/~isat/)をご覧ください。

1Molyneux A, Kerr R, Stratton I, Sandercock P, Clarke M, Shrimpton J, Holman R. International Subarachnoid Aneurysm Trial (ISAT) of neurosurgical clipping versus endovascular coiling in 2143 patients with ruptured intracranial aneurysms: a randomised trial. Lancet. 2002: 360: 1267-74.
2One-year data on 1,888 patients demonstrated a relative risk reduction of 26.8% in favor of coiling, an absolute risk reduction of 8.7%. Reference: Kerr R. The International Subarachnoid Aneurysm Trial: What have we learned? Presentation at the AANS Satellite Symposium: State of the Art Treatment for Acute Subarachnoid Hemorrhage. April 28, 2003.
3Haley EC, Kassell NF, Apperson-Hansen C, Moles MH, Alves WM. A randomized double-blind, placebo-controlled trial of tirilazad mesylate in patients with aneurysmal subarachnoid hemorrhage: a cooperative study in North America. J Neurosurg. 1997;86: 467-74.
4Cross, DeWitte T et. al. Mortality Following Subarachnoid Hemorrhage Varies With Hospital Case Volume in 18 States. To be published.
5Grimes, David A and Schulz, Kenneth F. An overview of clinical research: the lay of the land. Lancet. 2002: 359: 57-61.
6Kassell NF, Haley EC, Apperson-Hansen C, et al. Randomized, double-blind, vehicle-controlled trial of tirilazad mesylate in patients with aneurysmal subarachnoid hemorrhage: a cooperative study in Europe, Australia, and New Zealand. J Neurosurg. 1996; 84: 221-228.